任意後見制度 そのB
任意後見制度の利用にあたって
メリットとデメリットを天秤にかけ、最善の策が任意後見制度であるかどうかをきちんと見極める必要があります。
やはりネックとなるのは成年後見人と成年後見監督人への毎月の報酬ではないでしょうか。
なにか不安があっても、専門家とはいえ見ず知らずの人に自分の財産の管理をお願いしようとする方は少ないかもしれません。
このことを踏まえると、私見ですが、現行の制度の下では「任意後見契約(移行型)」を信頼できる家族と結んでおくことが認知症の対策として最善の方法のひとつであると思います。
この後で触れる「財産管理委任契約」で認知機能が衰える前を、「任意後見契約」で認知機能が衰えた後をサポートでき、任意後見受任者が家族なので、契約の中で「報酬なし」とすることで、いざ契約を発動させることになっても、報酬は家庭裁判所で選任される「後見監督人」の分のみとなります。
最初の任意後見契約(移行型)の締結時に手間がかかること、また公正証書の作成などの費用がかかりますが、仮に認知症になってしまっても、本人の口座からお金がおろせなかったり、施設入所の際に、本人の意思確認ができず入所できないという事態を回避できるという「安心」が手に入ります。
認知症にならなければ任意後見契約が発動することはありません。後見監督人も選任されませんので、月々の報酬が発生することはありません。
この場合、せっかく締結した任意後見契約が無駄になってしまうことになりますが、この契約を使わずに済むことが、むしろ幸せな人生を送れたことの証となるのではないでしょうか?
こうした制度を利用されないのであれば、認知症の方の口座から、前もって手続きをしておけば一定額を下すことができるといった、各銀行が独自で取り扱っている商品を検討されてみるのもよろしいかと思います。
厚生労働省の推計によると、2040年には、認知症患者数は584万人、軽度認知症(MCI)は612万人前後に達する見込みです。
認知症は65歳以上の高齢者の約15%、6.7人に1人の割合となり、さらにそれより多くの高齢者が軽度認知症(MCI)になることが想定されています。
うちは大丈夫だろう、多分…
みなさんそう思われているかもしれませんが、もしも認知機能が衰えてしまったら、誰が後見人になるかわからない「法定後見制度」の利用を検討しなければならなくなるかもしれません。
衰えてしまってからでは、もう備えることはできません…
任意後見制度に関して興味を持たれた方は、当事務所までご相談ください。