遺言書 その@

遺言書のススメ

 

 これまでお話しましたとおり、遺産分割協議は手間のかかる手続きであることがおわかりいただけたかと思います。

 

 また、大切な人が亡くなって気持ちの整理がつかない中で行わなければなりませんので、相続人間で感情的になってしまうことも少なくありません。

 

 そこで、亡くなる前にご自身で法的に有効な遺言書」を作成しておくと、残されたご家族が大変助かることになります。

 

 作ろうかどうしようか迷っている方は、まずご自身で作成することができる「自筆証書遺言書」の作成を検討してみましょう。

 

 

遺言書作成のメリット

 

  • 残された相続人が遺産分割協議をしなくて済む
  • 遺言者が事前に自分で準備できる
  • 相続人同士で揉めにくい
  •  

    遺言書とは?

     

     遺言者自らの意思表示に「法的拘束力」を持たせる行為です

     

    →「父さんが死んだら、お母さんを大切にし、仲良く暮らすこと」などの書き置きは遺言として法的拘束力は有しません。これらは付言事項として残しましょう。

     

     ご自身の意思を書面にすることで、何でも法的な拘束力を持たせられるわけではありません。

     

     以下の内容が、遺言によって法的な拘束力を持たせることができるものになります。

    ◆遺言で法的拘束力を持たせられる項目

     

  • 財産の処分
  • 推定相続人の廃除、廃除の取り消し
  • 認知
  • 子の後見人、後見監督人の指定
  • 相続分の指定または第3者への委託
  • (遺言による相続分の指定は法定相続分より優先されます)

  • 遺産分割方法の指定または指定の委託
  • 遺産分割の禁止
  • 相続人相互の担保責任の指定
  • 特別受益者の持ち戻しの免除
  • 遺言執行者の指定または指定の委託
  • 遺留分侵害額請求権の行使方法の指定
  • 保険金受取人の変更
  • サンプルサイト

  • 信託の設定など
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    ※これ以外のこと、例えば家族の介護のことや葬式の方法のようなことを謳っても法的な拘束力は生じません。

     

    遺留分について

     

     もし、遺言者が「全財産を愛人に相続させる」と遺言してしまった場合、配偶者や子は遺産を貰うことができず、生活に困ってしまいます。

     

     こうした場合に配慮し、兄弟姉妹以外の相続人には、遺言でも影響を受けない、最低限保障されている相続分として「遺留分」が定められています。(民法1042条)

     

     権利者全体に保障された遺留分は、直系尊属のみが相続人の場合は相続財産全体の1/3、それ以外の場合は1/2です。

     

    ※不動産の遺留分の額は実際の売買価格(実勢価格)で算定します。(相続税評価額や固定資産税評価額ではありません)

     

    相続人 権利者全体の遺留分 配偶者 直系尊属 兄弟姉妹
    配偶者のみ 1/2 1/2
    配偶者と子 1/2 1/4 1/4
    配偶者と父母 1/2 2/6 1/6
    配偶者と兄弟姉妹 1/2 1/2 なし
    子のみ 1/2 1/2
    父母のみ 1/3 1/3
    兄弟姉妹のみ なし なし

     

     遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は遺贈や贈与を受けた相手(先の例では愛人)に、遺留分の回復を請求することができます。

     

     これを遺留分侵害額請求といいます。

     

     行使の方法に特に決まりはなく、相手方に意思表示をすることで足りますが、行使できる期間は、相続の開始や遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った日から1年以内に限られ、仮に知らなかったとしても、相続の開始から10年が経過すると請求権自体が消滅します。

     

     相手方に消滅時効を主張されないよう、遺留分侵害額請求を行う場合、内容証明郵便で意思表示したほうがよいと思われます。