遺言書 そのA

こんな方は遺言書を残しましょう

 

 残されたご家族が遺産分割協議で苦労しないようにというのもそうですが、それ以外にも遺言書を作成しておいたほうがいい理由があります。

 

遺言書を残しておいたほうがよいと思われる方

 

@ 相続財産がほぼ確定している方
A 相続人に認知症の方や重い病気、障害を持つ人がいる方
B 子供のいない夫婦

C 離婚、再婚し、前の配偶者との間に子がいる方
D 内縁の夫や妻がいる方
E 単身の方で相続人がいない方
F 折り合いの悪い相続人がいる方

 

 @は残されたご家族が遺産分割協議をやらなくて済むように、また相続人間で揉める可能性を少なくしておくために作成しておくといいかもしれません。

 

 Aは以下で掘り下げてご説明しますが、相続人の中に判断能力が不十分な方がいる場合、遺産分割協議を行うことができませんので、協議を進めるためには成年後見制度(法定後見)の利用を検討することになりますが、手間とお金がかかってしまうことから、このリスクを避けるために遺言書の作成を検討しましょう。

 

 Bのお子さんのいないご夫婦は、お互いにたすき掛けで全財産を相続させるといいかもしれません。

 

 なぜなら、被相続人に兄弟姉妹がいる場合、疎遠であってもその方たちも法定相続人として1/4の相続する権利を有しているからです。

 

 Cは再婚された方で、前の配偶者との間に実子がいる場合、その子は相続人になりますので、今のご家族との間で揉めてしまう可能性があります。

 

 Dは内縁関係では相続する権利を有していませんので、遺言書で内縁の夫や妻にきちんと相続分を指定してあげましょう。

 

 Eの単身で相続人がいない方は、何もしませんと相続財産は国庫に帰属となりますので、お世話になった方に遺贈したり、社会福祉法人などに寄付をするなど、遺言で行うことができます。

 

 Fの折り合いの悪い相続人に財産を残したくない場合、財産を相続させない旨の意思表示を遺言によって行うことができます。

 

 ただしこの場合は「遺言執行者」を必ず選任し、その執行者が被相続人の死後に遺言執行者が家庭裁判所に排除請求を行うことになります。

 

 

相続人に認知症など判断能力を欠く方がいる場合

 

 相続人の中に認知症など判断能力を欠く方がいる場合、公正な遺産分割協議ができないばかりか、他の相続人に悪意がある場合、都合のいいようにその方の相続分を操作してしまうかもしれません。

 

 こうしたことを避けるために家庭裁判所に申立てをすると、成年後見人が選任され、その成年後見人が代わりに遺産分割協議を行うことになります。

 

 

 この家族で私が亡くなってしまったら誰が相続人になりますか?

 

 

 認知機能が衰えている妻と長男、長女が相続人になりますね。

 

 この場合、妻が認知症で判断能力に支障があると、3人で遺産分割協議をして、どの財産をどのように分けるかという話し合いができません。

 

 この長男と長女が悪い人ですと、妻の取り分を都合のいいようにされてしまうかもしれません。

 

 

 そこで、ご自分で判断することができない方については、ご家族などが家庭裁判所に申立てをしますと、成年後見人が選任され、後見人がこの妻に変わって遺産分割協議を行うことになります。

 

成年後見制度については後で詳しくお話しますが、手続きが面倒ですし、何より遺産分割協議が終わっても後見人を解任できないことから、亡くなるまでずっと報酬を払い続けなければなりません。

 

 

 つまり、「手間」と「コスト」が大変掛かります。

 

 この「手間」と「コスト」を避けるために、このようなことが心配な方は、法的に有効な遺言書を作成して、どの財産を誰に分けるかをきちんと決めておいた方がいいと思います。

 

 高齢化が進むことで、今後ますますこのようなご家庭が多くなっていくと思いますので、この例はぜひ覚えておいていただき、すでに相続人の中に判断能力が十分でない方がいる場合、またはそのような兆候がある場合、ご自身の相続に備えて法的に有効な遺言書を作ることを検討しましょう。

 

主な遺言書の種類

 

(1)自筆証書遺言書
(2)公正証書遺言書
(3)秘密証書遺言書

 

 

秘密証書遺言について

 

公証人と証人2名の立ち合いのもと、公証役場で作成されます。

 

  • 遺言者が遺言書に署名押印する。
  • その遺言書を封じ押印した印鑑で封印。
  • 公証人1名と証人2名に封書を提出、自己の遺言書であることを申述する。
  • 公証人が日付と申述を記載、遺言者、証人も署名押印する。
  •  

     秘密が保て、偽造・変造の恐れはありませんが、保管は公証役場が行わず、自身の管理となるので紛失や未発見のリスクがあります。

     

     秘密証書遺言書は遺言書の内容をできる限り秘密にしたい場合に用いられる手法ですが、実務上はあまり使われていないのが現状のようです。