坂戸市・鶴ヶ島市・毛呂山町・越生町の相続、遺言、成年後見制度の利用に関する相談を承ります。

家族信託 そのB(親なき後)

 
親なき後の問題

 この家族信託という制度に出会った時、まず最初に考えたのは、障害者の「親なき後」の、親御さんの心配ごとの解消について使えるのではないかということでした。

 

 理解を深めていくと、成年後見制度ではしっくりいかない、モヤモヤしたところをうまく補ってくれる制度であることを改めて感じました。

 

事例3)
 知的障害がある長女がいる。元気なうちは親である自分(父)が面倒をみたいと思っているが、認知機能が衰えたり、もしも死亡してしまった場合、長男に託したいが何をどうしたらいいかわからない。
 また、いくらか蓄えがあるので、自分の死後長女が経済的に困らないようにしてやりたい。
 長女の死後、残りの財産は世話になった長男一家に行くようにしたい。
 長男には自分の家庭があるので、負担をかけすぎないよう配慮したいと考えている。

 

●法定後見制度を利用する場合
 長女が自分で任意後見契約ができない(判断能力がない)のであれば、法定後見制度の利用を検討することになります。

 

 父の願いは、「自分が元気なうちは自分が長女の面倒をみたい」というものです。

 

 今から後見人を選任してもいいのですが、専門職後見人が選任されてしまった場合、長女の財産管理権と身上監護権は後見人主導となりますので、「自分で面倒をみたい」という思いが十分に叶わなくなる可能性があります。

 

●任意後見契約の可能性
 この場合、父が長男と任意後見契約を結び、その契約の一内容として、長女の生活に配慮した財産管理や身上監護を盛り込むのはどうでしょうか?

 

 任意後見契約の代理権の範囲で、他の者の財産管理や身上監護が認められるのか、難しいところであると思われます。

 

●遺言書の限界
 障害を持つ子どもに財産を多く残したいと考える親御さんが多いと思います。

 

 父は遺言でそのように分配することはできますが、このケースにおける長女は判断能力が不十分なため、次の相続に向けた遺言書を書くことができません。

 

 したがって、父が希望するように、長女の残りの財産を長男や長男の子に相続させることができないのです。

 

 遺言書はあくまで遺言者の次の世代にしか効力がありません。

 

●家族信託を利用すると…
◎事例3の考え方

 自分(父)が存命の間は受益者を自分(父)とし、信託契約で受託者長男に管理・給付をしてもらいます。

 

 この中から長女の財産管理を行い、身上監護も元気でいる限り自分(父)が行います。

 

 自分(父)が認知症になったり、死亡してしまった後は、長女に法定後見人を選任するよう信託契約の中で長男に頼んでおきます。

 

 第2受益者を長女とし、法定後見人に受託者長男から長女の生活資金や療養費を支給、長男からの支援はこの財産管理のみとし、身上監護は後見人に行ってもらうことで長男の負担が軽減されます。

 

 長女が亡くなったら、法定後見は当然に終了しますが、信託契約も終了するよう契約内容に謳っておきます。

 

 残った信託財産は、元の「名義」+「受益権」の形に戻り、信託契約で存命であれば長男に、長男が死亡していれば長男の息子に渡すことができます。

 

 また、信託契約で長女がお世話になった福祉施設に寄付することなどもできます。

 

 このように成年後見制度や遺言だけでは不十分なケースであっても、家族信託を使うことでその不十分さを補うことができる場合があります。

 

 

 

 

 
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